心のSOS

子育て疲れ”解消のヒント 精神科医・宮田 雄吾

vol.12 "今どきの子育て"もそう悪くない

 子育て講演会の案内を前に、洋子ママはなんだか気が進みません。「昔に比べて今の子どもたちはダメになった。親のあり方を見直して、子どもと積極的にかかわりましょう」

 きっとこんなことをいわれるに決まってると想像してしまうから。 "上から目線"で「昔はよかった。今どきの親はダメ親だ、反省しろ」といわれるのにはウンザリ。それに「子どもともっとかかわれ」なんていっている偉い人たちが、人にいうほどわが子とかかわる時間があるとは思えない。自分ができないことを人にいわないで!

 そう思いつつも、テレビのニュースを見ていると、やっぱり今の子どもたちはだめなのかなと思ってしまう。そんなママに、子どもの今と昔を比べるデータをお教えします。

1. 少年による殺人検挙人員

 昭和40年代前半までは200~400人台で増減を繰り返し、40年代後半から減少傾向になり、50年代以降はおおむね100人未満で推移。平成10~13年は100人を超えたものの、14年以降は100人未満。17年は67人、18年上半期は29人。

2. 少年による放火検挙人員

 昭和36年が694人と多く、その後は減少傾向。平成元年は230人、17年は86人。放火事件が騒がれた平成18年でも上半期46人。

 要するに日本の子どもは昔ほど人を殺さないし、放火もしないのです。ついでにいうと、中高年の男性のほうが若い男性より殺人率が高い。そんな国はめったにありません。

 さらに、自殺について厚生労働省の統計(人口10万対の自殺死亡率)でみると、15~19歳の死亡率は、昭和30年は男37.2、女26.1。しかし昭和40年には男8.8、女6.1と減少し、以降は多少の増減を繰り返しつつ経過。平成15年は、男8.8、女5.6。ちなみに、同年の55~59歳の男性の自殺死亡率は71.1です。

 子どもの自殺にしても、昔より少なくなっているのは明らかです。

 殺人・放火と自殺の数値だけで子どもは語れない。でもどうです?いろいろ人はいるけれど、昔より"自殺しないし殺さない子ども"を育てる"今の親"の子育ても、そう悪くはない。そう思えませんか?

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