心のSOS

子育て疲れ”解消のヒント 精神科医・宮田 雄吾

vol.04 わが子を好きになれないとき

 とっても苦しいのです。母親失格だと思えて仕方がないのです― 二人の子をもつ優子ママは一人でじっと悩んでいます。実は優子ママ、下の息子はかわいいのに上の娘がどうしても好きになれないのです。「わが子なんだから好きにならなきゃダメだ」と一生懸命努力したのに、どうしても好きになれないのです。意を決して相談した保育園の先生には、「母親には母性愛がある」といわれ、そう信じて頑張ったけれど好きになれない。そのうちに、娘の顔を見るのもつらくなってしまったのです。

 実は、ひそかにこういう悩みを抱えているお母さんは少なくありません。子どもの虐待防止センターが以前行った調査によると、「子どもとは気が合わない」と感じているお母さんが7%もいたそうです。そう、わが子だからかわいいとは限らないのです。

 「好き」という思いは感情そのものですから、いくら好きになろうとしても無理なものは無理。だからといって、子どもをほったらかすわけにはいかない。そこでどうするかが問題ですが、この問題を解決するヒントは、ファストフードの店員さんが教えてくれます。

 お客さんが来店するなり、「いらっしゃいませ」とスマイル。おつりのお礼は1枚ずつていねいに渡してくれて、最後に両手をそっと添えてくれる。そこに本当の愛などありませんが、心はちょっぴりワクワクします。まあ少なくとも嫌な気持ちにはなりません。

 子どもを愛せないときは無理に愛そうとしなくていい。そんなときはせめて、お客さんと接するように親切にすると決めましょう。つくりものの親切でも構いません。ただの親切を愛と勘違いして、何人もの男性が今日も夜の街にくり出します。大人にばれないのですから、子どもにだって意外とばれないものです。愛そうとして愛せずに思いつめたお母さんから「愛の鞭」をふるわれるより、よっぽどいいと思います。

 考えてみれば、親切にすることで子どもに悪い影響を与えないようにしようという控えめな決意の底に流れるものこそが、実は「愛」そのものかもしれません。

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