心のSOS

子育て疲れ”解消のヒント 精神科医・宮田 雄吾

vol.02 「子育ての春」をゆっくり待とう

 よその子と自分の子を比べてしまうのは、いつの時代も親の常。「子どもの成長の早さは一人ひとり違うんだ」と頭ではわかっていても、よその子は2歳でオムツが外れた、と聞くとお母さんはつい焦ってしまいます。
 1月生まれの花子ちゃん。「誕生日がきたからオムツを外すぞ」と気合の入ったお母さんに促され、オムツを外してみました。だけどお漏らしつづきでお母さんはヘトヘト。
 イライラするお母さんを見てストレスがたまった花子ちゃんも、ギャアギャアと怪獣化……。
 途方にくれているお母さんに、こんなアドバイスを送りたいと思います。
 「春を待ちましょう」
 だって、真冬にオムツがパンツになったんじゃ、お尻が寒くて花子ちゃんも大変ですし、お漏らしをすれば洗濯物も山盛りになってしまいますから。「そんなことでいいのかしら」とご心配でしょう。でも大丈夫。だって、小学校に入ってもオムツをつけている子はまず見ませんから。
 北海道と沖縄では「春」のくる時期が違うように、子育ても人によって「春」がくる時期は異なります。でも、冬のあとは必ず春がやってくるのです。ゆっくり春を待ちましょう。
 離乳についても同じです。1歳の誕生日を迎えた太郎君はびっくり!ママのおっぱいに顔が描いてある。まるで巨大な人面相。おっぱいが手放せない太郎君を驚かせて、離乳を完了させようというお母さんのたくらみでした。
 気持ちはわかりますが、そこまでしなくても大丈夫です。離乳はやがて完了します。間違いありません。だって、母乳を主食にしている大人には、いまだに出会ったことはありませんから。
 子どもの成長のスピードは千差万別です。ですから子どもの準備が整っていなくて、先に進めるための取り組みがうまくいかないことがたびたびあります。やっても駄目なときは、思い切って取り組みをいったん中止して後回しにしてみましょう。
 それまでよりもちょっとゆっくり育てるなかで生まれてくる穏やかさが、結果的に子どもの育ちを促して、次に取り組むときには、楽にスムーズにいくことは少なくないと思うのです。

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