心が軽くなる子育てご相談 精神科医・宮田 雄吾
vol.08 落ち着きのなさは"AD/HD"?
「小学校2年の息子は、幼少時からところかまわず走り回るなど落ち着きがなく、集中して何かをやるのが苦手です。AD/HDかも……と心配です。また、先日『授業中に立ち歩きがある』と聞き、きつくしかったところ『僕はどうせ悪い子だから』といったのも気になります。今後どのように接すればよいのでしょうか?」
AD/HDの診断が、安堵と希望をもたらすことも
近年、AD/HD(注意欠陥/多動性障害)という疾患が、かなり一般的に知られるようになりました。「落ち着きがなく(=多動)」「うっかりちゃんで(=不注意)」「カーッとなりやすい(衝動性)」子どもをさすのですが、「どこまで正常?どこからAD/HD?」という疑問の声も耳にします。
そこで、まずはAD/HDの基本的な見極め方。
1. 落ち着かないのは"生まれつき"であること。思春期になって落ち着かなくなったというのは違う。
2. 落ち着かないのはどこででも。家でだけ、学校でだけ落ち着かないというのは違う。
3. 落ち着かないのは半年以上。4月だけ、とかテスト前だけとか、一時的ならば違う。
厳密にいえば、判別困難な子もいます。それは、世の中には落ち着きはらった子とAD/HDの子の2種類しかいないわけではないからです。正常範囲とされる子でも落ち着き具合はさまざま。ですから、専門家は診断基準を用いて一定のところで線引きしています。つまりAD/HDすれすれの正常範囲の子だっているというわけです。
時に、「AD/HDというレッテルを子どもに張るなんて!」と憤る人もいます。もちろんレッテルだけ張って、説明も支援もしないなんていうのは問題外。でも、いうことを聞かない子どもの相手と「あなたが甘やかすから落ち着かないのよ」という周囲の批判に疲れ果てたお母さんにとって、AD/HDの診断はしばしば安堵と希望をもたらします。それは、「AD/HDは目鼻立ちと同じように生まれつきの脳の特徴であり、親の育て方が悪くてなったのではない」という安堵。そして、「適切な薬物療法で改善が得られる」という希望。
「自分も子どもも悪くなかった。AD/HDだっただけだ」と気がつき、冷静さを取り戻したお母さんの対応は、子どものよさを褒めたり、たたかなくなったり、少々は目をつぶったり、落ち着く環境づくりに励んだり、飽きる前に切り上げたりと変化を遂げていきます。
そしてその変化は、しかられつづけるなかで自分を悪い子だと勘違いしていた子どもに、再び自信を取り戻させていくのです。
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