心のSOS

心が軽くなる子育てご相談 精神科医・宮田 雄吾

vol.06 子どもを愛せるか不安

相談

 「現在、妊娠8ヶ月です。私自身、母から虐待とも呼べるような厳しいしつけを受けました。大人になってからも折り合いが悪く、“母から愛されていない”という思いが今でもあります。『愛されて育っていない人は、自分の子どもも愛せない』という話を聞き、自分が子どもを愛せるのか、不安でいっぱいです」

愛の表現技術のレッスンが「確かな愛」につながる

 「虐待を受けつづけて育った人が、わが子を虐待する率は3~4割」という“虐待の世代間連鎖”といわれる現象が、児童虐待の研究者から報告されています。こうした現状を前に、「やっぱり自分は子どもを愛せないんだ」と、悲しい子ども時代を過ごしたあなたは、絶望のふちに沈んでいるかもしれません。本当は、人一倍、素敵な家庭を夢見ているのに、自分にはそれはけっして手に入らないとしか思えなくなって…。
 でもこれらの研究は、実はひとつの希望を示しています。それは、「虐待を受けつづけて育った人であっても、6~7割の人は子どもを虐待せずにやれる」という確かな希望。
 「子どもに愛という感情を抱けるか」という点についていうならば、それはなんともわかりません。でもやっぱり子どもには、「愛されているなあ」と感じてもらいたいわけです。
 そのために知っておきたいこと。それは子どもが感じる愛は、親の心のなかにある愛ではなく、“親の行動と言動によって外に表現された愛”だということです。「愛せない」と心のなかで感じるだけならば、子どもは傷つきません。大切なのは、仮に愛せないなら愛せないなりに、どう行動し、言葉をかけたかという点です。
 人間は、自分の感情は残念ながらコントロールできません。しかし本気で願い、練習を重ねることによって、行動や言動はやがて自分でコントロールできるようになります。つまり、子どもに“愛されているなあと思わせる技術”は上達できるのです。
 最後に、愛の表現技術のトレーニング法を3つ紹介します。

1. 愛を表現することが上手な人の様子を繰り返し見ること。
2. いいなあと思ったやり方があったら、その形をまねして行ってみること。
3. 最初はうまく伝わらないので、思考錯誤しながら反復練習すること。失敗はオッケー。

 子どもだって(かつてあなたがそうだったように)愛を受け入れたいと願っているはず。
 愛を伝えたいあなたと、愛を受け入れたい子どもがそこにいて、その願いを取り下げずに歩んだ先に現れてくるものは、きっと「確かな愛」だと思うのです。

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