心が軽くなる子育てご相談 精神科医・宮田 雄吾
vol.05 自分を責めてしまう傾向が?
「授業中に息子(小学2年)がよそ見をしていたので、先生が「黒板を見てね」とさとしたら、自分をコツンとたたいていたと担任の先生から聞きました。私はわりとしつけに厳しいので、それが影響しているのではと思います。息子が必要以上に自分を責めてしまう傾向にあるのではないかと心配です」
親がまず、自分自身を責めないことが大切
「子どもの心のシグナルを見落とさないようにしよう!」
子どもが何か大きな事件をおこすたび、テレビで、学校で、街で繰り返されるこのフレーズ。それを耳にしたまじめな大人たちは「うちの子は大丈夫かしら」とそれはそれは心配になって、子どもの様子をうかがいます。
子どもがいつもと違う様子を見せたらさあ大変。電光石火の勢いで「どうしたの?何かあったの?お母さんに話してごらん!」と質問の速射砲!
お母さんの反応の速さと勢いに対して感じた戸惑いと、そこはかとない息苦しさを振り払うように子どもは答えます。
「別に…」
しかし「何かあるに違いない」と確信しているお母さんに「別に…」という答えは、とうてい信じることができません。そこでお母さんは日ごろからこっそり引け目を感じていることのなかに、その答えを求めてしまいがちなのです。それは数多くある可能性のうちのホンの一つにすぎないのに!
冒頭のケースについていうならば、「子どもが自分をたたいていた」ことを聞き逃さない細やかさは見事。ただしそれだけで、「厳しい子育てのため、子どもが必要以上に自分を責めるようになった」と考えて悩み始めるのはちょっと敏感すぎる気がします。それは数多くある可能性の一つにすぎません。子どもにしてみれば、ただおどけただけなのかもしれない。判断する際には、一つの場面だけではなく、いろんな場面での子どもの言動・行動を見て情報を収集してからにしましょう。
もし子どもが自分を責めすぎる傾向があるとわかっても、お母さんは自分を責めないこと。自分を責めているお母さんを見て、子どもはさらに自分を責めるようになりますから。
子どものシグナルを見落とさないように、ある程度の細やかさをもって子どもと接するのは大切。ただしシグナルに対してアクションをおこす際には、多少、鈍いくらいがちょうどいい。「こんな可能性もあるなあ」と思いはめぐらせつつも、しばらくはそっと様子を見ておきましょう。
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