心のSOS

心が軽くなる子育てご相談 精神科医・宮田 雄吾

vol.04 中1の娘が父親を避ける

相談

 「最近、中学1年の娘が、父親を避けているように見えます。思春期なので仕方がないと思う一方、小学生のときはそんなことはなく慕っていたのに…と気になってしまいます」

自立のステップを踏み出した証拠

 私が勤務する大村共立病院の「児童思春期ストレスケア病棟」には、過食やリストカット、性的問題行動を繰り返す女性患者さんが大勢入院してきます。彼女たちに共通しているのは、「自分の不安や寂しさを、自分自身で抱きとめて、処理することがとても苦手」ということ。
 その不安を通常の方法では処理しきれず、過食やリストカットなどの望ましくない方法をつい用いてしまったり、“しがみつける誰か”に依存しすぎてしまったりするのです。そんな彼女らから、まれではなく聞く話。
「お父さんとは、今でもときどき一緒にお風呂に入っています。恥ずかしくないかって?別に…」
「うーん…」
 聞いているこちらは、ちょっととまどいます。だって、もうどこから見ても立派な女性のからだをしているのですから…。
 思春期の大切なテーマは、親から自立していくこと。しかし、子どもにとって親の影響力は強大です。その影響力を振り切って自立していこうとするには、それはそれは大変なエネルギーが必要。地球の大気圏から飛び出そうとするロケット並みのエネルギーがいるのです。
 そのエネルギーがあまりに不足していたり、もしくは親の影響力が変に強すぎたために、自立への取り組みが放棄されたとき、「いつまでもお父さんと一緒に入浴する」という現象が発生してしまうのです。
 小学生のときにはお父さんを慕っていた娘さんが、思春期に入ってお父さんを避け始めたということは、自立への取り組みをキチンと始めた証拠。娘さんが自立を実感したときに、また関係は穏やかなものへと変化しますから、そのときを待ちましょう。
 お父さんの影響力を振り切ろうとするエネルギーは、ときにコントロールを失い、「お父さんなんか大嫌い!」といった激しい言葉や、まったく口をきこうとしないといった態度として現れるかもしれません。
 あまりの態度に頭にきたら、真正面から口ゲンカをしてもそれはOK。
 「お父さんを自分の力で怒らせ、本気にさせることができる」という体験もまた、子どもが自分の力を実感できる体験だからです。

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